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広報みずまき2021年12月10日号(特集)

更新日:2021年12月8日

しめ飾りという伝統文化 福神様を家に招く

正月といえば「しめ飾り」といった光景は大分少なくなったのではないでしょうか。以前であれば、玄関や倉庫など、多くの場所で見ることができました。

今回は失われつつある伝統文化「しめ飾り」を紹介。安田克徳さんは宮若市日吉地区で50年以上しめ飾り作りを続け、今では小倉城内八坂神社のしめ飾りも担当しています。日吉地区はしめ飾り業が盛んで最盛期には30軒以上あった作り手も、今は7軒になったとのこと。今でもしめ飾り作りを続ける安田さんにしめ飾りの「いろは」を伺いました。

安田さんの画像

しめ飾りの画像

  • ユズリ葉(新しい葉が古い葉と入れ替わり出てくる性質から家が途切れることなく代々繁栄を連想)
  • ウラジロ(葉の裏が白く心の裏に偽りがない・清廉潔白を表す)
  • ダイダイ(何代もの実が同じ木に一緒に実っていることから、「子孫繁栄」の象徴)

Qしめ飾りとは?

元々神社の「しめ縄」から家庭用に発展したものです。しめ縄は神社の社殿を取り囲むように取り付けられていて、神の領域と現世を分け隔てる「結界」として考えられています。新築の際の地鎮祭で土地の四隅に杭を立て、しめ縄を張っているところを見たことがあると思いますが、あれは結界を作って土地を清めているんです。

Q飾る意味は?

最初は全国同じだったかもしれませんが地域ごとに、その土地の風習で飾る意味が変化したようです。この辺では、「1年の区切りとして自宅を清め、神域を作りましょう。そして、正月に豊作や健康をもたらす福神様を自宅に招きましょう」と言われていますが、県内でも山を1つ越えたら意味が若干異なっているかもしれません。

Q飾る場所は?

昔は玄関や倉庫、蛇口、車にも取り付けていましたが、1つ飾るのであれば玄関が良いと思います。神様を迎え入れて幸福を授けてほしい場所に飾ると良いです。

Q設置する期間は?

12月30日に飾り、1月8日に外すのが一般的です。ただ、地域で期間が違ったり、1年間飾り続けたりする地域もあります。

Qしめ飾り業者で50年?

昔、しめ飾りは各家庭で作っていたので販売などはほとんどなかったです。全国的に農家が減り始めた50年ほど前から、しめ飾りの需要が多くなって、この地区でしめ飾り業が始まりました。私の本業は、花屋などに花や木を売ることで、今の時期だけしめ飾りや門松を作っています。

Qしめ飾りを飾る家が減った?

作り手がそれ以上に減っています。しめ飾りの材料はワラですが、準備に手間がかかります。今、米の収穫は効率的に機械1台で稲刈りと脱穀をしますが、この方法だとワラが痛んで使えません。しめ飾り用には稲刈りと脱穀を分ける必要があります。昔から利益が薄い上、手間も大変かかるので、新規で始める人はいないのが実情です。

Q国産のしめ飾りには御利益が?

今は外国産も売られていて国産は高く思われがちです。ただ、国産のものは使っているダイダイ(代々繁栄)やウラジロ(潔白・神聖)、ユズリ葉などにはそれぞれ意味が込められていて、伝統的な願掛けがあります。少し出費にはなりますが、多くの方が神様から沢山の福を授かって、良い1年を始めてもらえたらと思います。そのためにも、毎年しめ飾りを作り続けて、この伝統文化が続いてほしいと願っています。

水巻町のしめ飾り

水巻町では鶴(八幡西区型)が主流で、数は少なくなりましたが、今でも自宅用にしめ飾り作りを続けている人もいます。今回、立屋敷でしめ飾り作りを行う入江さんに話しを伺いました。

私が子どもの頃は、地元の下二でほとんどの家がしめ飾りを作っていました。父は鶴や博多風の飾りではなく、かなり大きな暖簾のような飾りを作っていてすごかったですよ。私も自分の家を持ってから、鶴の飾りを作るようになったんですが、今、作っているのは「ごぼう締め」。一般的に神社で使われる形です。10年ほど前、宮地嶽神社の大しめ縄作りに参加する機会があって、その作り方を真似てミニチュア版を作ってます。縄を編む際は左巻きとか、飾る際は穂先が向かって左とか、しめ飾りは知れば知るほど、奥が深くて面白いですよ。

入江さんの写真

しめ飾り紹介 地域でここまで違う!

安田さんが作成する主な4型のしめ飾りを紹介。全国的に作られている鶴のしめ飾りですが、九州では圧倒的にこの形が多いとのこと。ただ、鶴は鶴でも地域で形が少し異なっています。また、福岡市の「暖簾」や山口県「海老」の形は全国的にもこの地域にしかない珍しい形です。今回は水巻町で作られるしめ飾りや全国で作られるしめ飾りも併せて紹介します。

鶴(つる)
  • 八幡西区・ 遠賀中間地域のしめ飾り

    八幡西区・ 遠賀中間地域

  • 小倉北区行橋市地域のしめ飾り

    小倉北区・行橋市地域

八幡西区近郊では「鶴は千年、亀は万年」と言われるように、長寿を象徴する鶴のしめ飾り。小倉北区・行橋地域では形が若干異なり、羽を絞った形が好まれる。作り方はまるで違い、八幡西区型は8つの羽が1つずつ分離できるのに対し、小倉北区型は左右対象の羽が1つのワラでつながっている。

暖簾(のれん)

福岡市地域のしめ飾り

福岡市地域(※博多区が特に多い。)

商人のまち博多らしく、「暖簾型」のしめ飾り。入店する際、両手で暖簾を分けている姿が連想される。使用している材料は北九州地域と全く同じだが、暖簾がけできるよう、上部に横長の竹が設置されている。宮若市は八幡西区型が主流で、すぐ隣の篠栗町ではこの形が主流。

海老(えび)

山口県地域のしめ飾り

山口県地域

曲がっている形が「腰が曲がるまでに元気に長生きしますように」と健康長寿として考えられる海老を使ったしめ飾り。安田さんも山口県の業者からの依頼で数年前初めて作った形で、全国的に見ても珍しいとのこと。

番外編 全国のしめ飾り

全国のしめ飾りの画像

工作舎・森須磨子著の本表紙

全国には亀や俵など数多くのしめ飾りが存在します。図書館の専門図書で確認すれば、さらに珍しいしめ飾りや、その土地で作られる背景・意味なども確認できます。

しめ飾りの販売はクリスマス以降が最盛期

北九州市内だけでも形が違うしめ飾り。全国的に見てみれば、その地域の風習が大きく影響して、さまざまな形を見ることができます。農業が盛んな地域や寒さが厳しい地域では強く豊作を願う形がしめ飾りに表されるなど、本来の意味「新年に福神様を自宅に招き入れ、たくさんの幸せを授けてもらおう」に、さらに思いが込められるようになりました。

安田さんによると、近年ではしめ飾りを飾る家が減った一方で、新しい形のしめ飾りが誕生したとのこと。それは現代風の家に合わせた洋風のしめ飾りで、クリスマスリースのような形をしています。生産者としては、これも風習による変化と同じ変化と捉えているそうです。

しめ飾りは生のダイダイやユズリ葉、ウラジロ、竹などを使い、新鮮な状態で正月を迎えるため、クリスマスを過ぎると一斉に販売が始まります。今回、生産者のしめ飾りへの思いに触れ、私自身この文化が残ってほしいと切に思いました。皆さんも一緒にしめ飾り文化の「伝道者」になっていきませんか。

しめ飾りの処分方法

地元の神社で行われる「どんど焼き」で処分してください。町内では毎年1月中旬に行われています。詳しくは各神社に問い合わせてください。

問い合わせ

役場広報係 電話番号:201-4321

このページの担当部署

企画課 広報係
電話番号:(代表)093-201-4321