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立屋敷1丁目の町有地売買契約に関する監査請求

更新日:2021年2月16日

平成26年6月24日、安部秀郷さんから住民監査請求書が提出されました。

その監査請求の内容と結果をお知らせします。

住民監査請求の趣旨

監査請求書および請求書添付の事実を証する書面から、本件請求の要旨を次のとおりとした。

  1. 土地売買契約の是正
    平成20年12月22日、福岡県遠賀郡水巻町立屋敷1丁目5091番1、同5092番および同6056番1所在の土地(以下「本件土地」という。)が水巻町からA氏に対し売却された(以下「本件売買契約」という。別紙1:登記事項証明書)。当該売買は、一般競争入札によるものではなく、随意契約によりなされたものである。
    しかるに、本件売買契約は、地方自治法施行令第167条に定める随意契約によることができる場合にあたらないため、一般競争入札によらなかったことが違法であることは明らかである。よって、本件売買契約が無効であることの確認など、本件売買契約を是正するために必要な措置を講じることを求める。
    なお、下記2のとおり、本件売買契約の前から、本件土地を第三者に賃貸する話が出ていたのであり、水巻町が本件土地をA氏に売却した意図が不明である。
  2. 損害の補填

    本件土地は、本件売買契約直後に有限会社Bに対し賃貸されているところ、同土地のBへの賃貸の話は、本件売買契約前である平成19年7月には出ていた。本件土地をA氏に売却せずに水巻町が直接Bに対し賃貸していたならば、水巻町は本件土地の賃料収入が得られたものである。実際に、もともとは水巻町が貸主となる予定であったうえ、水巻町は、本件土地を平成19年ころまで株式会社Cに賃貸していた実績もある。
    そして、本件土地の隣地のBへの賃料は、1m²あたり227.38円である。本件土地は合計173m²であるから、隣地と同水準でBに賃貸する場合の賃料は1カ月3万9336円になる。隣地の賃貸借契約期間は20年であり、本件土地を前記賃料で20年間賃貸した場合、当該賃料収入は合計944万640円となる。したがって、本件売買契約が無効であれば944万640円が、本件売買契約が有効であれば944万640円と本件土地売買契約における売買代金との差額が、水巻町に発生、または発生する蓋然性の高い損害といえる。
    よって、本件売買契約の決裁者および本件売買契約の手続を行った職員らに当該損害の賠償を求めるなど、損害を補填するために必要な措置を講じるよう勧告することを求める。

  3. 正当な理由

    本請求は、本件売買契約から1年以上が経過している。しかるに、随意契約は相対取引であるから住民には公表されない。また、請求者は本件土地の隣地の所有者であるが、本件売買契約時に境界の立会に求められることもなかった。このように、請求者を含め住民が本件売買契約を覚知する端緒はなかったものである。そして、住民が町所有の不動産の処分についてあまねく登記を調査し続けることは不可能であるから、「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができた」(最判昭和63年4月22日判時1280号63頁)とはいえず、地方自治法第242条第2項の「正当な理由があるとき」に該当する。

    なお、請求者は、平成26年5月12日、本請求とは何ら関係のない機会に偶然本件土地の登記を見た際に、本件売買契約の存在に気づいたものである。

審査の結果

住民監査請求は、地方自治法第242条の規定に基づき、普通地方公共団体の住民が、当該普通地方公共団体の長若しくは執行機関・職員による違法・不当な財務会計上の行為があると認めるとき、監査委員に対し監査を求め、当該普通地方公共団体のこうむった損害の補填等を図ることを目的とするものである。
また、同条第2項では「当該行為のあった日、または終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」とされている。
なお、住民監査請求について1年という期間制限が設けられているが、これは普通地方公共団体の職員の行った財務会計上の行為については、いつまでも争いうる状態にしておくことは法的安定性を損ない好ましいことではないため、なるべく早く確定せしめようという趣旨から規定されたと解される。

「1年の期間の経過」について

本住民監査請求においては、本件土地がA氏に売却されたのが、平成20年12月22日であることは、請求人の提出した事実証明書により明らかである。本住民監査請求は平成26年6月24日に提出されたもので、当該行為のあった日、または終わった日からすでに5年余を経過しており、請求の期間制限1年を徒過している。

「正当な理由があるとき」について

次に、「正当な理由があるとき」について請求人が主張しているところによれば、「随意契約は相対取引であるから住民には公表されない。また、請求者は本件土地の隣地の所有者であるが、本件土地売買契約時に境界の立会に求められることもなかった。このように、請求者を含め住民が本件売買契約を覚知する端緒はなかったものである。そして、住民が町所有の不動産の処分についてあまねく登記を調査し続けることは不可能であるから、地方自治法第242条第2項の『正当な理由があるとき』に該当する。」としている。
従って、この住民監査請求の受理要件である「正当な理由があるとき」に該当するか否かの審査を行うこととした。

判例によると、「正当な理由があるとき」とは、たとえば、当該行為が住民に隠れて秘密裡に行われ、1年を経過してからはじめて明るみに出たような場合などのように、当該行為のあった日、または終わった日から1年を経過したものについて、特に請求を認めるだけの正当な理由があるときを指す。「正当な理由」の有無は、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査した時、客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか。また当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁 昭和63年4月22日)。としている。

ところで、本件監査請求人は、「請求者は本件土地の隣地の所有者であるが、本件売買契約時に境界の立会に求められることもなかった。このように、請求者を含め住民が本件売買契約を覚知する端緒はなかったものである。」としているので、本件売買契約時点の前後において、境界立会等があったか、否か。また本件土地の売買を知ることができるような事実があったか、否か。を要件審査においての着眼点とした。

このため審査対象部局を水巻町役場管財課と定め、平成26年7月3日に本件売買契約が行われた当時の資料について、提示を求め、課長以下担当職員からの説明を受けた。

  1. 売却を知ることができたか
    説明では、当該売買契約は、「水巻町普通財産売払要綱」に基づき行われたもので、これによると、普通財産を随意契約により売払う場合、隣接土地所有者および利害関係者の同意書などの添付書類が必要とされている。調査の結果「隣接土地所有者および利害関係者の同意書」は平成20年4月15日付け請求人本人の署名、捺印のあるものの存在が確認され、土地売買契約が行われることを知ることができたと確認される。
  2. 境界立会があったか
    平成20年5月23日付けで、本件土地に隣接する請求人所有地について、請求人から土地家屋調査士への全権委任をした境界査定申請がなされ、境界査定申請書には請求人が捺印し、それに添付されている境界の同意書にも請求人の捺印があることを確認した。よって境界の立会が行われたと確認される。

よって、請求人の「境界の立会に求められることもなかった。」、「請求者を含め住民が本件売買契約を覚知する端緒はなかったものである。」という点については、審査の結果、「隣接土地所有者および利害関係者の同意書」により請求人が本件売買契約を知ることができたものと推察され、また、境界査定も行われており、客観的にみても情報公開請求や登記簿等を調査することによって監査請求の期限内に覚知することは可能であったと認められるため、請求人の主張に理由があるとは認められない。

本件請求は、正当な理由がなく監査請求期間を徒過しており、地方自治法第242条に規定する住民監査請求の要件を欠き不適法であると判断する。よって、本請求を却下する。

監査委員:松本 大次郎

監査委員:出利葉 義孝

このページの担当部署

議会事務局
電話番号:(代表)093-201-4321